記憶に残っている天才の言葉

多賀工業会会長 杉田 龍二(昭49学子)
(2025年5月1日)
電子情報通信技術の劇的な進歩に伴い、パソコン、スマホ、インターネット、SNSは誰もが使う生活インフラになりました。数10年前には、今のネット社会は想像できませんでした。コンピューター関連技術は更なる発展を遂げており、シンギュラリティが現実味を帯びてきました。急速な進化を続ける生成AI、データサイエンス、量子コンピューター等の将来を予測することは困難ですが、世界を大きく変貌させることは間違いないでしょう。
量子コンピューターに関する個人的なコメントを述べたいと思います。量子コンピューターは量子力学の原理で動作するコンピューターであり、40数年前に、有名なノーベル賞物理学者であるファインマンによって提唱されました。ファインマンのCaltechでの講義に基づいて編集された「ファインマン物理学」を、学生時代に勉強した会員の方はたくさんおられると思います。私もその1人であり、その外観と内容に魅了されました。学生だった時、大学生協には、白と金でタイトル等の文字が書かれた赤いハードカバーのファインマン物理学が並んでいました。第3巻の量子力学には、古典的な粒子からは想像もできない振る舞いをする量子の本質が詳細に解説されており、不思議で魅力的な世界に引き込まれました。この本には、量子力学の基本である確率振幅や重ね合わせ、観測に対する量子の振る舞い等が、初心者にもわかるよう懇切丁寧に説明されておりました。もちろん、行列対角化やエルミット演算子等にも言及しており、さらに、量子力学によって原子や分子の振る舞い及び周期律表も理解できることも述べられていました。
この教科書を読んで頭に残った言葉があります。エピローグの最後に書かれている文です。”Perhaps you will not only have some appreciation of this culture; it is even possible that you may want to join in the greatest adventure that the human mind has ever begun.” 多賀工業会会員の皆様も、これまでさまざまな冒険にチャレンジして来られ、それらを乗り切って今に至っていることと思います。また、現在、準会員である学生の皆様は、これから遭遇するさまざまな冒険を乗り切れるよう、自らのポテンシャルを高めているものと思います。
以上、過去の話をしてしまいましたが、過去を振り返っているだけでは、いかなる組織も生き残れません。これまでもお伝えしておりますように、多賀工業会本部は改革を進めるべく、様々な取り組みを続けております。その中の3点について簡単にご説明致します。まず、2022年度に開始した「国際会議参加費支援」につきましては、2024年度は応募数が2桁に達しました。国際会議への参加は必ず本人のポテンシャルを高めますので、今後もこのペースが続くことを願っております。2点目ですが、2024年度に開始した「若手会員に対する支部総会参加費支援」は、同年度に早速、2支部から申請がありました。この策によって若手会員の参加が増えることを期待しております。3点目は会報関連です。社会に巣立った会員との唯一の連絡手段である「会報」については、予算が許す限り紙でのカラーA4版発行を続けたいと考えております。ただし,そのためには発行コストの削減が必須です。そこで2019年度からは、賛助金を納めていない会員への送付は停止しております。なお、賛助金は卒業後25年経過した会員の皆様に、会費として20,000円を納めて頂くものです。賛助金用振込用紙を今年度から会報に綴じ込みましたので、ご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます、更なるコスト削減策として、会費を納入されていない会員にも会報を送らないこととしました。
最後になりましたが、同窓会会費の支払いにご理解頂きました新入生とその保護者の方々、賛助金及び寄付金を納めて頂きました方々に深謝申し上げますと共に、会員の皆様のご活躍とご多幸を祈念致します。